「目が覚めましたか?」
視界に見慣れた男の姿が見えた。
「ここは?」
「幽助の家です。桑原くん達は幽助を連れて車で避難していたんですが、打上げの買出しをしてから戻るそうです」
「相変わらずめでたい連中だ」
「飛影も霊魂体から戻ったばかりでしょう?もう少し大人しくしていてくださいね」
そう言うと立ち上がろうとしていた飛影を無理やり座らせた。
「やはり魂が抜けた時だけ発動する類いの結界だったのか…」
「何の話だ?」
「これ」
そういうと蔵馬は包帯で巻いてある右手を見せた。
「あなたに頼まれた体を運ぼうとしたら結界が発動しましてね。大火傷です。植物を使って運ぼうともしましたが、わずかな妖気にも反応するみたいで… これだけの結界なら異次元砲が皿屋敷市に撃たれても大丈夫だろうと見込んで時間もなかったので先に逃げました。謝っておきます」
笑顔でそう話す蔵馬を飛影は複雑な表情で見ていた。
「軀ですか?」
「知らん」
「かなりの結界でしたよ。触媒無しであのレベルの術はそうそう見かけません。術式を教えて欲しいくらいです」
少しおどけた風に言う蔵馬に飛影は舌打ちをし目をそらした。
「飛影、オレはあなたがあの場に残ると言いだした時、とてもあなたらしいなと思いました」
「あんなところで幽助に死なれても困る。それだけだ」
「えぇ、もしもの時は助けるつもりだったんですよね。自分の身の安全よりしたい事をする。そして魔界にいるあの人もそう考えた。だからこんな結界をかけたのでは?」
「何が言いたい?」
睨むように飛影は蔵馬のことを見る。
「飛影、あなたは……」
「いよおぉぉぉ、帰ったぞー!!」
蔵馬の声を遮るように玄関の方から大声が響く。
「どうやら帰ってきたみたいですね」
「フンっ、騒がしくなる前に帰る」
「そうですか。気をつけて」
窓を開けベランダに出た飛影の姿はあっという間に見えなくなっていった。
「帰る…か…。そんな場所があなたにもできたんですね」
夜の闇にとけていった飛影を見ながら蔵馬は呟やいた。


