いつもそばで

「あぁ、もうそんな時期か。分かった。なるべく早く戻る。あぁ、頼む」
「何かあったのか?」
「百足がちょっとな… 飛影、お前先に戻れ。オレも孤光達に会ったらすぐ戻る」
通信機をしまいながら、軀はオレに指示をした。

今日は2人で大統領府に来ていた。近々霊界の奴らと新たな協定を組むとかでその打合せだ。発言をするのは軀だけでオレは護衛。パトロールをサボるのにちょうどいい口実だと思いついてきた訳だが、幽助や蔵馬がニヤニヤしながらこっちを見ていたのは気のせいだろうか。

「急ぎなら、無視して戻ってもいいんじゃないか?」
「百足に酒持って押しかけられる方がめんどくせぇ」
そんな訳でオレは百足にひとり先に戻ることにした。

 

近くをパトロールしているはずの百足はすぐ見つけることが出来た。百足は足を止め、その巨体を休めていた。
何かあったというのは百足が止まったという事なのだろうか?とりあえず中に入る。
一瞬で異様さに気づいた。
あちらこちらで妖怪が倒れている。
とは言っても死んではおらず、気を失っているだけ。ただ、酷く衰弱しているように見えた。

「チッ、なにが起こってやがる」

奇淋がいると思われる操舵室に向かう。操舵室の中も倒れている妖怪だらけだった。辛うじて奇淋はまだ意識があるようだったが、座り込んでいる状態だった。

「おい、何があった?」
「ひ、飛影か?軀様は?」
「もうじき戻る」
「そうか… やはり軀様は凄いお方だ。これにひとりで耐えれるのだからな。我らだけではどうにも力不足らしい。お前も気を…つけろよ?」
「何にだ?」
「……」

奇淋は答える前に意識を失った。
面倒だったが邪眼で奇淋の直近の意識を視ることにした。しかしそこには何かの姿はなく、次々と倒れていく妖怪たちの姿だけが視えた。

「チッ、なんなんだ」

わけが分からぬまま、操舵室を後にする。
空気が重い。
そろそろ軀も戻る頃だろうか?そう思い今度は軀の部屋を目指す。いく途中に倒れている妖怪を何匹もみたが、意識のある奴は誰もいなかった。
重く大きい扉を開く。その部屋はさらに空気が重く感じた。
軀はまだ戻っていない。
誰もいないはずの部屋で何かが動く気配を感じた。刀に手をかけ身構える。

「ねぇ、軀は?」

そう聞いてきたのは小さな子どもだった。寝台の上に腰掛け、足をぶらぶらさせながらこっちを見ている。

「さっきから探しているんだけど、見つからないんだよね」

寝台から飛び降りた子どもは、オレに向かって歩いてくる。間合いを取ろうとしたが、何故か体が動かなかった。

「軀の匂いがする」

くんくんと鼻を動かし、子どもは呟いた。
動かなくなった体を動かそうとしてみるが、ピクリともしない。

「ここはボクの中だから無理だよ。そういえばお前、この間ボクに穴あけた奴だよね?」
「なんの話だ?」

今しがた初めて会ったこのガキと闘った記憶はない。悪態をついたが、子どもはそんなの御構いなしで話し続ける。

「結構痛いんだよね。塞ぐのも力を使うし。ただでさえ最近走りっぱなしだしさ…」
「何の話かさっぱり分からん」

向こうはオレに傷つけられたと言っているがオレはまったく思い出せなかった。

「ボクは軀のこと好きなんだけど、お前は?」

思いもしない発言に思わず目を見開いた。

「お前みたいなガキから軀の匂いがするとか、かなり嫌なんだけど」
「お前の方がオレよりガキだろう?」

目の前の子どもにそう返す。それが気に入らなかったのか、子どもはあからさまに不機嫌な顔になった。周りの空気がさらに重くなる。

「お前のこと、食べようと思えば一瞬だよ?」

子どもらしからぬドスのきいた声がした。
次の瞬間、急激に体の力が抜けていくのが分かった。立っていられなくなり膝をつく。

「変わった味だな。軀に全部食べるのはダメって言われてるから食べないでやるけど。次ふざけた事言ったら全部食べるから」

そう言うと笑顔で膝をついてるオレの側までそいつはやってきた。

「それで、お前は軀のこと好きなの?」
「オレは………」

その言葉は直接声にしたことがない言葉。
言葉にするならアイツに言いたい。
こんなガキ相手に言ってたまるか。

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