タイムトラベル

「望みは叶いましたか?」
「ああ。約束どおり煮るなり焼くなり好きにしろ」

漆黒の服をまとった青年の向かいに立つ妖怪はふっと笑う。
背中には淡い赤色の大きな翼があり、淡黄色の長い髪を緩く束ねてる。男性とも女性とも判断しづらい顔立ちに紫色のアイシャドウが一際目立っていた。

「そうしたいところなんですが、出来ないんですよね。貴方、既に蟲と契約してるでしょう?」
「蟲?」
「大きな蟲です。この手の契約は破るとこっちの方が痛い目をみるので」

そう言われて飛影は移動要塞を思い出す。そういえば軀がいなくなる少し前に本体が出てきて『軀の次はお前』と言っていた事を思い出す。あの時は食事の順番の話かと思っていたが、どうやら軀がしていた百足との契約が飛影に委譲されたという意味だったようだ。

「それならなぜオレの願いを叶えた?時を飛ぶ代償は必ず必要なんだろ?過去であれば過去であるほど代償は大きいと言ったのは貴様だぞ?」
「あの人には借りがありまして」

ニッコリと笑顔で翼を持つ妖怪は言った。

「そうか…、いつもアイツには先回りされるな」
「仲が良くて羨ましいです。早く出会えるといいですね」
「知ってるのか?」
「さて?」

二人の視線が交差し、沈黙が続く。

「色々と世話になった」

そう言うと身を翻し、黒い青年はその場を去った。
残された妖怪はゆっくりと本来の鳥の姿に変身する。長い尾はまるで燃える炎のようだ。

「もうすぐですよ。私も約束を果たしましたからね」

その鳥の囁きは誰にも聞こえない。
鳥は十数年前に自分を召喚した妖怪を思い出す。半身に火傷の跡がある蒼い目の女妖怪。
『これ全部やるから、ちょっと頼まれてくれないか?』
そう言って大量の妖力を帯びた石を持参してきた。
死期が近いにも関わらず、その妖怪の瞳はとても力強かった。願いを何でも叶えたくなる魅力的な瞳をしていた。
出来る事なら自分もまた会ってみたい。
羽が一枚ヒラリと舞う。
鳥は光の粉となって姿を消えていった。

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