大きな天蓋付きの寝台に眠るふたつの影。ひとつがもぞもぞと起きだした。
「ずいぶん幸せそうな顔して寝てやがる」
隣で眠る軀は普段滅多に見せる事のない満たされた表情で眠っていた。可能であればもっと見ていたいが今日は大統領府に行く用事がある。そろそろ奇淋が起こしにくる時間だ。
「おい、軀。いい加減起きろ。出かけるんだろう?」
軽く肩を叩きながら声をかける。起こし方を失敗すると吹っ飛ばされる可能性があるのでそこは細心の注意が必要だ。呻くような軀の声。うっすらと瞳を開け状況を確認しながらゆっくり身体を起こす。
まだ半分寝ぼけているような表情で軀は飛影を見つめてきた。
「どうかしたか?」
「お前がオレに愛してるとか言う夢をみた」
「なっ!?」
思わず飛影の声が裏返った。
「これが俗に言う欲求不満ってヤツなのかもな。夢にしてはなかなかリアリティがあったぜ?」
伸びをしながら冗談っぽく軀は言った。
「なんだ?」
「…」
「なんだよ?」
「……」
視線を感じた軀は飛影に話しかける。何か思案しているようだが、目が泳いでいる。
ふぅと一息つくと飛影は再度軀を見つめてきた。
「お前がそれを望むなら言ってやる」
そう言うと軀を抱きしめ耳元で囁く。
「お前のことがずっと好きだ」
一瞬何を言われてるのか軀は理解出来なかった。
言われるとは思ってもいなかったその言葉。
ドクドクと自分の核が脈打つ音がする。そして強く抱きしめてくる飛影の体温はとても心地よかった。
どのくらい抱きしめあっていただろうか。思い出したように軀が呟く。
「夢の方が色気があったぞ?」
「知るか!」
くくくと軀は笑いだす。耳がまだ熱い。照れ隠しに飛影を茶化してみたものの軀も落ち着くにはもう少し時間がかかりそうだった。
そういえば、夢の飛影は未来から来たと言っていたか…
軀は朧げだった夢の内容を今しがたの出来事ですっかり鮮明に思い出していた。
夢で聞いた言葉は『ずっと愛してる』
目の前で聞いた言葉は『ずっと好きだ』
どちらも愛おしくて目眩がしそうだ。
「また言ってくれるか?」
「フン、しばらく言わん」
「そうか、しばらく言わないが言ってくれるんだな」
勝ち誇ったように笑う軀に飛影はもう何も言い返せなかった。
「それにしても何だよ突然。オレの夢の中の自分に対抗意識?めんどくさいヤツだな」
「お前に言われたくない」
他愛もない会話をしながら、二人の距離は縮まる。
自然と重なった唇は、いつもより熱を帯びていた。
この時間が永遠に続きますように。
END


