白い花を花瓶に生ける。殺風景だった部屋が少しだけ暖かくなった様子に軀は思わず顔が緩んだ。
「ハッピーバースデイ」
その言葉とともにもらう花束。もう何度貰ったのか曖昧になってきたけれど、その思い出は軀の記憶に刻まれていく。
花は枯れていずれ無くなる。それでも貰うととても嬉しくなる。
「来年もくれるか?」
「お前は毎年それを言うな」
「そういう事言いながら花を贈るお前は優しい奴だと思うぜ?」
クスクスと笑う軀の声が部屋に響く。面白くなさそうに飛影は仏頂面になった。
「そんな怒るなよ。毎年お前から誕生日を祝われてオレは幸せだぞ」
にこりと軀が微笑むと、仏頂面が今度は照れ顔へと変わっていく。そんな反応を見るのも軀の楽しみのひとつだ。
「今度あの鉢で何か育ててみようかと思ってな。お前だったら何にする?」
部屋の片隅にあるリボンのついた大きな鉢。それは初めて飛影から貰った誕生日プレゼントだ。鉢の中身はとうの昔に処分した。軀があまりにもあっさり処分したから飛影に驚かれたものだ。ただ、鉢はずっと空っぽのまま部屋の片隅に置いてあったのだ。
「食えるヤツか、薬草の類にしようかと思っているんだけどな。あ、毒草とかも面白いな」
「……毒草は止めて普通の花にしろ。食べ物もダメだ。その鉢で出来たものを食べたいとは思わない」
「まぁ、そうだな……」
暫しの沈黙。
そしてお互い目を合わせて思わず笑った。
気づけば二人の距離は縮まって、軀は飛影に捉えられるように抱きしめられていた。
「なんだよ、急に」
「触りたくなった」
ぎゅうと背中に回された手に力が入るのが軀に伝わる。
あたたかい体温が心地よい。
耳元でかすかにまたあの言葉が聞こえた。
ーーハッピーバースデイ
今日は特別な1日。
END


